屈辱なほどに 〜憎き男に一途に愛を注がれる夜〜
でもそんなことよりも、『キッチンひだまり』が炎に飲み込まれているというのに、なにもすることができない無力さに涙があふれた。


「…なんでっ、こんなことにっ……」


声を殺すもこらえきれず、わたしは声を出して泣いた。


消防車が駆けつけ、たくさんの野次馬が集まってきて、そんな人たちからわたしの泣き顔を隠すように、阿久津さんはその腕の中に泣き続けるわたしを抱きしめた。
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