屈辱なほどに 〜憎き男に一途に愛を注がれる夜〜
新しくお店を出すにしても、腕が落ちては意味がないので、阿久津さんの家であえて手のこんだ料理をするようにしている。


* * *


その日は、生パスタとローストビーフに挑戦していた。

ローストビーフは前に作ったことはあるけど、パスタを1から作るのは初めて。


夕食にと思って作り始めたけど、想定以上に時間がかかってしまった。


ようやくジェノベーゼパスタが出来上がったときには、もう夜の8時半だった。


いつもよりも遅めの夕食。

でもがんばった甲斐あって、とってもおいしく作ることができた。


ローストビーフも以前作ったときは硬くなってしまったけど、今日は柔らかく仕上がった。


今日も広いリビングで1人で夕食。


――そのはずだったのだけれど。

物音がしたと思ったら、リビングのドアが開けられた。
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