屈辱なほどに 〜憎き男に一途に愛を注がれる夜〜
いくら説明に行ってもわたしが耳を貸さないから、強制的に追い出すために火事を――。


ちょっとした笑顔を振りまいたところで、阿久津さんは阿久津さん。

商店街の歴史や地元民の愛着なんてどうでもよくて、ただ自分たちが理想とするショッピングモールを建てたいだけ。


「阿久津さん。言っておきますけど、火事でお店がダメになってしまったからといって、立ち退きを受け入れるわけじゃありませんから」


すべてを失くして、阿久津さんの胸で泣いてしまったけど、あれからなんとか気持ちを持ち直すことができた。

絶対に、阿久津さんの好きにはさせない。


「そうか。わかった」


キッと睨みつけるわたしに対して、阿久津さんの余裕の笑みを見せる。

その表情が…またムカツク。


でも――。

だれかといっしょに食事をするのは久々で、…楽しかったことだけはたしか。
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