屈辱なほどに 〜憎き男に一途に愛を注がれる夜〜
それからも、阿久津さんとの奇妙な同居は続いた。


その間に、火事について警察から連絡があった。

調査の結果、火事の原因は通行人によるタバコのポイ捨てだった。


その人物はすでに特定され、現在身柄を拘束しているという。

わたしは阿久津さんがだれかに火をつけさせたのではないかと考えていたけど、ポイ捨ての犯人と阿久津さんやアーバンオアシスには一切の接点がなかった。


阿久津さんは、あの火事には無関係だった。


それなのにわざわざ駆けつけて、わたしを救い出して――。

一歩間違えたら、阿久津さんだってあの火事に巻き込まれていたかもしれないのに。



その日の夜は、ずっとそのことを考えていた。

そのせいで、ふとスマホの時計を見たら日付をまたいでいた。


考えたってしょうがないのに…。
< 45 / 88 >

この作品をシェア

pagetop