屈辱なほどに 〜憎き男に一途に愛を注がれる夜〜
そろそろ寝よう。


布団の中で丸まったとき、部屋の外から物音が聞こえた。

おそらく、阿久津さんが帰ってきた。


今日も遅くまで仕事してたんだ。

そんなことを考えながらうとうとしていると、突然ものすごい音が響いて瞬時に目が覚めた。


「今の…、なに?」


思わずベッドから体を起こす。

なんだか気になって、わたしは恐る恐る部屋から顔をのぞかせた。


「あ…、阿久津さん?」


玄関のほうがぼんやりと明るいので目を向けると、角から阿久津さんの手が見えた。


…なんだ。

酔っ払って、玄関で寝てるだけか。


「阿久津さん、そんなところで寝てたら風邪引きますよ」


そう言いながら歩み寄ってみると――。

そこにあったのは、うつ伏せの状態で倒れる阿久津さんの姿だった。


すぐに、酔っ払って居眠りしているわけではないと思った。
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