屈辱なほどに 〜憎き男に一途に愛を注がれる夜〜
お弁当のおかずに使う鶏肉など、ウチが注文した商品をこうして届けてくれる。

美風商店街でいっしょに育ってきた仲で、お互いのお店の裏口から勝手に出入りできるほど、取引先としても良好な関係を築いている。


「注文してた商品、冷蔵庫に入れておいたぞ」

「ありがとう、貴斗。いつも助かる」


わたしにとって貴斗は、仲のいい幼なじみであり、この商店街をいっしょに盛り立てようとする心強い同志でもある。


そのとき、お店のドアが開いた。


「いらっしゃいませ!」


わたしはレジのそばからあいさつをする。


入ってきたのは、キャップを被った赤髪の若い男の人。

自撮りしているのだろうか、先端にスマホを取り付けた棒のようなものを握っている。


「じゃじゃ〜ん!やってきました、美風商店街の中にある『キッチンひだまり』。店の外観はしょぼいけど、意外と弁当はうまいとのことで検証しにきました〜!」
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