屈辱なほどに 〜憎き男に一途に愛を注がれる夜〜
「…“阿久津さん”?」


そうつぶやいた貴斗の手が止まった。

わたしは、はっとして口をつぐむ。


「今、“阿久津さん”って言った…?」

「…いや、それは…」

「しかも、“阿久津さんの部屋”って」


貴斗の低い声に、わたしはごくりとつばを飲む。


「どういうこと?心晴。…もしかして、今阿久津さんといっしょに住んでるのか?」

「え、えっと…、いっしょに住んでるっていうか…」


わたしは思わずうつむいた。

それを見て、貴斗はため息をつく。


「…なんだよ、それ。よりによって、阿久津さんのところって…」


ギリッと奥歯を噛みしめる貴斗。

次の瞬間、強い力で手首を握られたかと思ったら、わたしは床に押さえつけられていた。


拾い集めたパズルのピースがまた飛び散る。


「た…、貴斗…?」
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