屈辱なほどに 〜憎き男に一途に愛を注がれる夜〜
苦虫を噛み潰したような貴斗の顔に、思わずわたしの顔がこわばった。


「おかしいと思ったんだよ…。心晴が用もないのにアーバンオアシスにいるのが」

「あ、あれは…ただ忘れ物を届けにいっただけでっ…」

「へ〜、ずいぶんと親切なんだな。心晴にとっては阿久津さんは敵のはずなのに、いつの間に飼い慣らされたんだよ?」

「飼い慣らされたって…、そんな言い方――」

「じゃあ、他になにがあるんだよ!?いっしょに住んでるのは事実だろ!?」


わたしの言葉に対して、すぐさま貴斗が噛みつくように被せてくる。


どうしてかはわからないけど――。

貴斗、怒ってる…?


「なんでオレのところじゃなくて、阿久津さんのところなんだよ?」

「だって…、さすがにそれはできないよ。わたしは貴斗の彼女でもない、ただの幼なじみなんだから。それに比べて阿久津さんは、敵だからこそなにもないっていうか――」
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