屈辱なほどに 〜憎き男に一途に愛を注がれる夜〜
「本当にそれだけ?」

「…え?」


すると、突然貴斗がわたしの首筋に顔を埋めてきた。


「な…なにするのっ、貴斗…!」

「本当は、こんなことされてるんじゃないのか?」

「…っ…!…痛いっ」


貴斗がわたしのあらわになった首筋に強く吸い付き、紅い痕を残した。


「やめてっ…、貴斗…。どうしてこんなこと…」

「悪いのは、心晴だろ。オレがこんなに好きっていうのに、心晴は他の男と――」


…待って。

貴斗が…、わたしのことが…好き?


『心晴がオレと結婚する。そうしたら、オレが婿養子としていっしょに『キッチンひだまり』を支えることができる』


たしかに前にそんなことを言われて、わたしを励まそうとして言ってくれた言葉だと思っていたけど――。

あれは、貴斗の本心…?


「…貴斗っ。お願いだから…やめて。わたしちって、そんな関係じゃないでしょ…?」
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