屈辱なほどに 〜憎き男に一途に愛を注がれる夜〜
「おいっ…心晴、いいのかよ!?あんなこと言わせておいて」

「いいのいいの。だれにでも好き嫌いはあるから」


わたしは待ってる間も笑顔を絶やさないようにする。


「じゃあ、とりあえずこれお願いしま〜す」


そう言って、赤髪の人が持ってきたのはチキン南蛮弁当だった。


「ありがとうございます。498円になります」

「はいは〜い」


赤髪の人は、財布を取り出そうとリュックを肩から下ろした。


そのとき、自撮り棒がレジ横の棚に置いていた酢豚のパックに当たり――。

床に落ちた衝撃でパックが開き、中の酢豚が飛び散った。


「…うわぁ!」


とっさに避けた赤髪の人だったけど、デニムにべったりと酢豚のタレがついてしまっていた。


「…大丈夫ですか!?」


わたしは慌てて布巾を持って駆け寄る。
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