女嫌いなはずの御曹司が、庶民の私を離しそうにない。
簡単に説明するも、加賀見先輩の警戒心は解けない。
すっと目を細めて累くんと向き合う。
「岸井累……昔何度か会ったことがあったな」
「さあ、覚えてませんね。興味のない人の名前って覚えられなくて。あ、でも瀬那との関係だけは気になるのでぜひ詳しく教えてください」
……で、この二人はどうして出会って数分でこんなにバチバチしてるんだろう。
あれか? 実は親の会社がライバル企業だとかなのかな?
「加賀見は『川咲と二人になれる時間を楽しみにしてたのに邪魔しやがって、何なんだよこのくそ野郎』って思ってるんだよ、川咲嬢」
「あれ、天ヶ瀬先輩。いたんですか」
「やあ」
加賀見先輩に付いてきていたらしい天ヶ瀬先輩。
いつの間にやら私の隣にやってきて、加賀見先輩を指さしながら、にこやかに謎の解説を始めた。
「加賀見先輩、『くそ野郎』は言わないのでは」
「いや言うね」
「~っおい天ヶ瀬。お前も本当に何でいるんだ」