女嫌いなはずの御曹司が、庶民の私を離しそうにない。



まあ、累くんが人との距離感バグってるタイプだから、特別親密に見えただけというのもあるだろうけど。


……だけど、先輩が言いたいのはそういうことではなかったようだ。




「『同じぐらい』では納得いかない」


「ん?」


「一番じゃないと嫌だ」


「なっ……そう言われましても」




照れるわけでもなく、大真面目な表情で言いやがられた。

嫌だってそんな子どもみたいな……。


思わず一歩後ずさると、先輩は真面目な表情のまま一歩近づいてくる。

後ずさっては近づかれ。

それを繰り返し、いつの間にか壁際まで追い詰められていた。どうしよう。何この状態?




「ま、待ってください……り、律弥先輩!」




累くんと下の名前で呼び合ったせいで機嫌を損ねたということで、とりあえず先輩のことも名前で呼んでみる……という簡単なご機嫌取りを試してみる。

しかし加賀見先輩は真剣な顔をぴくりとも動かさない。これじゃだめだったか。


慌てて新たな手を考え始めたそのとき。


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