女嫌いなはずの御曹司が、庶民の私を離しそうにない。
「わ、私はお役御免ということでしょうか」
そういえば夏休み前もそんな話はしていた。
私のことは完全に平気になったから、他の女子にも徐々に慣れる必要があるのではないかと。
先輩は女性恐怖症のことを多くの人に知られるのを良しとしなかったので、しばらくは私相手の練習で様子見という話だったけれど……ちょうどいい相手が見つかったのだろうか。
そんなことを思っていると、先輩はちょっと笑って首を振った。
「いやそうじゃなくて、単純に時間が無くなりそうなんだ」
「え?」
「実は学園祭の実行委員を引き受けていてな」
「学園祭……ああ、そういえば11月の中旬とかでしたっけ」
入学時に説明された年間スケジュールを頭に思い浮かべる。
テストや課外授業の日程ばかりチェックしていたからその他の行事に関してはうろ覚えだったけど、確かそれぐらいだったはず。
「うちのクラス学園祭の話なんて全然出てませんけど、やっぱ準備とか大変なんですか?」
「いや、実行委員や一部の部活以外は特にやることはない」