女嫌いなはずの御曹司が、庶民の私を離しそうにない。
この学園祭は、私の知ってる学園祭と同じだと思ってはいけない。






「せーな。今日の放課後一緒に遊びに行こう!」




転校してきた累くんに付きまと……一緒に行動する日々が始まって二週間ほど。

相変わらず距離感がおかしいこの男は、今日も今日とて後ろから手を回して抱き着いてくる。


まったく。私はその手を雑に振り払いながら言った。




「テスト前にそんな余裕はありません」


「えー。近くのショッピングモールに買い物しにいくとかでいいんだよ? オレは瀬那と一緒ならどこでも楽しいし」


「ショッピングモール? 意外に庶民的だね累くん」


「そうかな。まあ留学先のホストファミリーは一般家庭だったし、金銭関係は割とまともかもね」




無意識に、以前加賀見先輩とした“放課後デート”を思い出した。

先輩は累くんんと逆で、庶民的な遊び場には疎そうだったな。

そういえば、連れて行くと約束したファミレスはまだ行けてない。


……って、いかん。話が逸れてしまった。




「とにかく、今日は家でテスト前最後の追い込みだから遊びには行きません!」



< 123 / 153 >

この作品をシェア

pagetop