女嫌いなはずの御曹司が、庶民の私を離しそうにない。



累くんは普段から人前でも不用意にそういう発言をするので、中には私と累くんが恋人同士だと勘違いしている人もいる。

聞かれたときにはすぐに否定しているものの、詩織ちゃんまで最近遠慮してお昼ご飯に誘ってくれる回数が減った気がする。

ここらで一度注意しておこうか。


そう思って口を開きかけたとき、外に目を向けていた累くんが「あ」と声を上げた。




「あれ、あそこにいるのあの先輩じゃん。鏡みたいな名前の」


「加賀見先輩のこと?」




心底嫌そうな声で、わざとらしくとぼけて言った累くん。

でもやがて、にやりと唇の端を上げた。




「おー、さっすがモテモテじゃん。ほら見てみなよ瀬那。周り女だらけ」




言われて私も窓の外をのぞいてみれば──加賀見先輩を中心に、五人ほどの女子生徒が集まって何やら話し込んでいるところだった。




「モテてるっていうより……学祭実行委員同士の集まりとかじゃない?」




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