女嫌いなはずの御曹司が、庶民の私を離しそうにない。
……その瞬間、時が止まったような気がした。
「え……?」
ステージ上に登場したのは、周りの目を集めずにはいられないほどの美形男子高校生。少しはねさせた黒髪と三白眼が特徴。
……あまりに信じられなさすぎて、まず人違いだと思った。
「加賀見、先輩……?」
エントリーナンバー4番、高等部三年の加賀見律弥です。
そんなあっさりとした自己紹介を聞いても、まだ別人だと思っていた。
だって、加賀見律弥を名乗る彼の隣には──
ふんわりと巻いた黒い髪に、透き通るような白い肌。消えてしまいそうなほど儚い雰囲気。
そんな超一級の美少女が、加賀見先輩の腕に自分の腕を絡めるようにして、ピタリとくっついていたから。
「そして、こっちが同じく高等部三年のミツキさん。彼女は話すのが苦手なので、俺が代わりに受け答えします。よろしくお願いします」
今度は隣の女性を紹介する加賀見先輩の顔色は、至って正常。
心臓が、ドッドッと大きな音を立てる。