女嫌いなはずの御曹司が、庶民の私を離しそうにない。
……そんなわけない。
だって先輩は、私以外の女子には触れることさえままならないはずなのに。
「あ、加賀見先輩だね。直接話したりするのはちょっと怖いけど、こうして見るとやっぱりかっこいい。彼女さんもすごき綺麗だし、お似合いなカップルだね、瀬那ちゃん」
「……」
「瀬那ちゃん?」
詩織ちゃんのうっとりとした声も、私の耳には届かない。
何で? どういうこと?
先輩。女の子にこんなぴったりくっつかれて、どうして平然としていられるんですか?
こんなに注目されるステージの上でこれができるのは、万が一にも倒れてしまうことはないと自信がある証拠。
つまりこのミツキさんという女性は、私と同じように──もしかしたら私以上に、恐怖を感じない特別な女性なのか。
……ううん。もしかしたらも何も。
こんなコンテストに出ている時点で、その関係は明白じゃないか。
恋人同士。それか──
『今回エントリーがありました仲良しカップルたちは全5組! 中には婚約者同士のお二人もいるとかいないとか……』