女嫌いなはずの御曹司が、庶民の私を離しそうにない。
意外な人が答えを知っていたりする。






いつもの旧視聴覚室。

普段通り勉強をしながら待っていると、やがてガラリと扉が開いて加賀見先輩が顔を見せる。




『先輩。お疲れ様です』


『ああ』




私はテキストを閉じて先輩を見る。




『じゃあ、今日も“練習”始めましょうか』


『そのことなんだが……練習はもうやめようと思う』


『え?』


『川咲にも紹介しよう』




にこりと優しい笑みを浮かべた先輩の隣にいつの間にか、ふんわりと巻いた黒い髪と透き通るような白い肌の儚げ美少女が立っている。

彼女は静かに微笑んで加賀見先輩の腕に抱き着く。




『彼女はミツキさん。俺の婚約者だ』


『こ、婚約者?』


『実は川咲に女性恐怖症克服の手伝いをしてもらっていたのは、きちんと彼女に触れられるようになりたかったからなんだ。おかげでこうして触れられるようになった』


『な……』


『ほら、ミツキさん相手ならキスをするのだって余裕だ』



< 138 / 243 >

この作品をシェア

pagetop