女嫌いなはずの御曹司が、庶民の私を離しそうにない。




そう言った加賀見先輩は、見せつけるようにミツキさんと唇を触れ合わせる。

言葉を失う私に、ミツキさんは勝ち誇ったように目を細めた。




『そういうわけで、川咲はもう用済みだ。今までありがとう』


『え、いや、待って。だって私は先輩のことっ……』







──ピピピピピッ


頭に響いた目覚まし時計の音。

手探りでアラームを止めて、のそのそと静かに起き上がる。




「何て夢だ……」




呆然と呟いた私は、静かに頭を抱えた。


今日は学園祭三日目。

カップルコンテストで見てしまった加賀見先輩と綺麗な女の子のことが頭からずっと離れない。


二日目である昨日は一人で学園祭を見ようかと思っていたけれど、おかげで全くその気になれなかった。

そして今日は、まさかの夢にまで出てきました、と。


私はもう一度ベッドに倒れ込んでぼんやり天井を眺める。

< 139 / 160 >

この作品をシェア

pagetop