女嫌いなはずの御曹司が、庶民の私を離しそうにない。
ミツキさん。まるで西洋の人形のような、整った顔の儚げな女の人。
どんな字を書くんだろう。「美月」さんだろうか。美しい月。何となくそれが似合う気がする。
それともちょっと和風に「美津紀」さんとか? それもありだな。
「ははっ」
思わず乾いた笑い声をあげてしまう。
あの二人が並ぶと本当にお似合いだった。私だったらこうはいかない。
ごろんと寝返りをうって、もう一度目覚まし時計を見る。
8時半をちょっと過ぎたぐらい。
とりあえず朝ごはん食べようかな。
のろのろと起き上がり、一階のキッチンへと向かう。
「あ、姉ちゃん起きた」
リビングでは、休日にもかかわらずいつも謎に早起きしている弟が、今日もソファに寝転がりながらテレビを見ていた。
私に気付くとテレビから目を離さないまま言う。