女嫌いなはずの御曹司が、庶民の私を離しそうにない。
「なあ姉ちゃん。今日の夕飯何する? 何でも姉ちゃんの好きなもの買ってくるって母ちゃんが言ってた」
「私の? 何で?」
「だって姉ちゃん今日誕生日だろ」
「誕生日……あ、本当だ」
すっかり忘れていた。
今日は、私の16歳の誕生日だ。
「なあ寿司にしようぜ。寿司食べたいだろ寿司」
「それはあんたが食べたいものでしょ。私たこ焼きがいい」
「は? たこ焼き? しょぼくね? せっかく高いもん食えるのに!」
「そういう気分なの。良いでしょ私の誕生日なんだから」
不満そうな弟を押し切ってトーストをかじる。焼きが甘かったようでふにゃふにゃしている。
私はトーストをどうにか口に押し込み、今日の予定を考えた。
学園祭の最終日。昼前から累くんと回る約束をしている。
約束の時間ちょうどに着くよう学校に向かうとして、それまではゴロゴロしていようか。