女嫌いなはずの御曹司が、庶民の私を離しそうにない。




「ていうか、せっかくの学園祭なのに天ヶ瀬先輩もお一人なんですか?」


「ううん。今は待ち合わせ中」


「そうですか。え、ちなみに待ち合わせ相手っていうのは……」


「あ、加賀見じゃないよ」




そっか。違うのか。

今会ったら変な態度をとってしまいそうなのでひとまず安心する。


私は運ばれてきたカフェオレをすすり、ほっと息をついた。

天ヶ瀬先輩はそんな私の顔をちらりと見て言う。




「川咲嬢、何かあった?」


「え」


「浮かない顔してるから」




心配してくれているという感じの声色ではない。

ただの雑談の一環といった、軽い調子。




「えっと……」




だけど、だからこそだろう。

そこまで親しくない人に、軽く聞かれたからこそ。




「……天ヶ瀬先輩は、一昨日のカップルコンテストに加賀見先輩と出てたミツキさんっていう綺麗な女性のこと、知ってますか?」




素直に聞いてみる気になったのだ。



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