女嫌いなはずの御曹司が、庶民の私を離しそうにない。
無敵モードの持続時間は。






 「……あーあ。やっぱ来ちゃうんだよね」

 


私が息を切らせて向かった先……保健室へと繋がる廊下の隅で座り込んでいた累くんは、そう言って弱々しく笑った。




「オレとの待ち合わせ場所は東門の横だよ?」


「ごめん……」


「加賀見センパイはもう元気そうだったよって言ったのに。それでも心配だったの?」


「心配、なのと……今どうしても先輩に話したいことがあって」




ぼそぼそとうつむきながら話す私の前に、累くんは勢いよくぴょんと起き上がって立ちはだかった。




「まあ、瀬那は多分こっちに来ちゃうんだろうなって思ってたから、オレもここで待ってたわけだけど」


「本当にごめん累くん。今度絶対埋め合わせするから……今から一緒に学園祭見て回る約束は、無かったことにしてくれないかな」




累くんが楽しみにしてくれていたのは知っている。

申し訳なさでまともに顔が見られなかった。


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