女嫌いなはずの御曹司が、庶民の私を離しそうにない。
「要するに、私に女性恐怖症克服の手伝いをしてほしいってだけのことですよね? やっぱり恋人になれってのがよくわからないんですけど」
「その練習ではこう……触れ合うことや、誰もいない場所で二人きりになることなんかを頼むことになる。こういうことは……恋人でもない相手とするのは抵抗があるだろう?」
「え、いや、うーん……」
「恋人同士になっておけば心置きなくそういったことができると思ったんだが」
まあ、筋は通ってるけど……。
何だか気を遣うポイントがちょっとズレてるんだよなぁ。
「頼む。もちろんそれなりにお礼はさせてもらう」
だけど、机に両手をついて頭を下げる姿からいかに本気なのかが伝わってきて。
私はしばらく考えた後、ふうっと長く息を吐き出した。
「……わかりました。良いですよ。協力しましょう」
「本当か!?」
「でも触れ合うとか二人きりになるとか、そういうのは友達でもしますから。だから恋人になるは無しで」