女嫌いなはずの御曹司が、庶民の私を離しそうにない。
本当に加賀見先輩にそんな権限があるのかは正直わからなかったから、ダメもとのお願いだった。
だけど先輩は、「へえ」とあまりピンとこない様子ながらもあっさり言う。
「わかった。頼んでみよう」
「え、嘘。本当にできるんですか? 教室一つ貸切るんですよ?」
「放課後にあまり使われないような教室ならできると思う」
まじか。すごいな。
「先輩」
私はすっと右手を伸ばした。
「ぜひお願いします!」
「期待してくれていい。これからよろしく頼む、川咲」
加賀見先輩は伸ばした私の右手をそっと握り返す。
ただ、触れた瞬間やっぱり少し気分が悪そうだった。