女嫌いなはずの御曹司が、庶民の私を離しそうにない。
苦しそうにハンカチで口元を押さえる先輩に、私は新しいペットボトルの水を慌てて渡す。
てか、「何故か」もなにも……。
過去のお茶会、明らかに肉食系女子にすり寄られた最悪な記憶しかないんでしょ!
何が「有意義な時間になった」だよ!
「気を遣わせたな。もう平気だ」
「もうちょい平気そうな顔になってから言ってください」
「平気だ」
「でも」
「平気だ」
はっきり言い放ちながらペットボトルを机に置く先輩。
何だよ。すごい意地張るなこの人。
「嫌ならいっそ仮病で休んじゃえばいいんじゃないですか? 加賀見先輩レベルなら、そんなイベントに頼らなくたって、将来役に立つ人間関係は既に作れてるでしょ?」
どちらかといえばこの人は、縁を作るために必死になる方ではなく、必死になられる方だろう。
加賀見先輩と仲良くなれたらと目論む人には申し訳ないけど、そんなイベント絶対参加しない方がいい。
だけど先輩は、私の言葉に静かに首を振った。