女嫌いなはずの御曹司が、庶民の私を離しそうにない。
なんてお言葉が当然のように返ってくる有様だ。
お嬢様方よ、私は使用人じゃない。それぐらい自分で取りにいってくれ。
だからすっかりくじけて、こうして一人で美味しい紅茶と高級スイーツに舌鼓を打っているわけである。
「なんか先輩も割とどうにかなってそうだし……」
少し離れた場所に座る加賀見先輩。
さぞかし苦しんでいることだろうと思っていたけど……。
「加賀見くん! あの、良かったらこのお菓子どうですか?」
「あ、ああ……」
「あ、ごめんね。こいつ甘い物あんまり得意じゃないんだ。代わりに僕がもらってもいいかな? 僕は甘い物大好きだから」
「ひゃっ、も、もちろんです天ヶ瀬くん!」
加賀見先輩の隣には、キラキラした空気を纏う、日本人離れした顔立ちのイケメンがいた。
天ヶ瀬と呼ばれているその先輩は、どうやら加賀見先輩の友人らしい。
彼は加賀見先輩の事情も知っているようで、先ほどから寄ってくる女子たちをさりげなく自分の方へ誘導している。