女嫌いなはずの御曹司が、庶民の私を離しそうにない。
私がフォローするとか偉そうに言ったけど、全くその必要はなかったわけだ。
その事実に若干不貞腐れつつ、芳醇なバターが香るマドレーヌを口に押し込む。めちゃくちゃ美味しい。
こんな調子でやけ食い……夢中になって食べていたせいか、いつの間にか紅茶が空になっていた。
お代わりもらいに行こう。こうなったら心ゆくまで飲み食いしてやる。
ダージリンにアッサムにアールグレイにアップルティー。紅茶の種類も豊富だったし、全制覇してやろう。
そう決心して、お代わりが置いてあるテーブルを目指して歩き始めた。
「ふふ、うん、それでね──」
「えー、そうなんだ──」
そんな私の付近に、よそ見しながら歩いていたお嬢様方の集団がいた。
……よそ見している奴らがこうして集まれば、次の展開はおのずと予測できるというもの。
「あっ!」
え、誰かがつまづいて転んだんだろうって? 大正解。
話すのに夢中になっていた一人が、ちょっとした地面のふくらみに足を取られた。