女嫌いなはずの御曹司が、庶民の私を離しそうにない。
「ね、ねえ川咲さん」
笹塚さんは、そんな私の内心など知るよしもなく、何やら緊張した表情を見せる。
「もし良かったら、なんだけど……。わたしのこと、詩織って呼んでくれませんか? 」
「え」
「お、お友達になりたい、です」
「私と……?」
「だめ、かな?」
「そんなっ! もちろん! 喜んで!」
いかん、近くにいた人が一気に振り返るぐらい大声で叫んでしまった。
軽く咳払いして改めて言い直す。
「私のこともぜひ瀬那って呼んで、詩織ちゃん」
「うん! 実はね、ずっと瀬那ちゃんと話してみたかったの。すごく大人っぽい上に、ここに特待生入学できるぐらい頭良くて……ずっとかっこいいなって思ってて」
「そ、そう?」
「だから嬉しい……」
思いもよらなかった評価に、ちょっと顔が熱くなる。
これまで、お金持ちのお嬢様方はなかなか価値観が合わないとか思ってた。