女嫌いなはずの御曹司が、庶民の私を離しそうにない。
だけどもしかして友達ができなかったのは、私の方がそうやって無意識に壁を作っていたからなのかもしれない。
こんな風に私を見ていてくれた人がいたという事実は想像以上に嬉しい。
そこまで思ってハッとした。
そうか、誰かが自分のことを知っていてくれるというのは嬉しいんだ。そしてそれは、きっと詩織ちゃんも同じ。
まさか加賀見先輩は、こうなることを見越して詩織ちゃんの情報を教えてくれたのかな。だから「お礼」ということ?
「本当に侮れないなあの人……」
「え?」
「ううん、何でもない」
私はにやける頬をどうにかひきしめて、できたばかりの友達に笑いかける。
加賀見先輩にこのことをどう報告しようかな、と想像してみたりしながら。