女嫌いなはずの御曹司が、庶民の私を離しそうにない。
──そして、そんな俺の変化に鋭く気付いた人間が一人いた。
「加賀見、最近ちょっと生き生きしてない?」
「は?」
俺がこの学校で一番気を許している友人・天ヶ瀬が、ある日そんなことを言った。
「そうか?」
「うん、毎日目に見えて楽しそうだよ。彼女でもできた? ……って、お前に限ってそれはないか」
「彼女ではないが……女子の友人ができた」
俺の答えに天ヶ瀬は「嘘、本当に?」と目を見開いた。
この学校で俺が女性恐怖症であることを知っているのは、学校医数名と川咲、そして天ヶ瀬だ。
「実は……」
俺は迷った末、川咲と出会ったときのことから全て話すことにした。
天ヶ瀬は女たらしの調子がいい奴ではあるが、決して口が軽い男ではない。信用はできる。
「なるほどね。まさか僕の知らないところでそんな面白いことになってたとは。川咲嬢ってのは確か、お茶会のとき途中で加賀見を連れ出した子だよね」