女嫌いなはずの御曹司が、庶民の私を離しそうにない。
「帰りはタクシーでも呼びますか?」
先輩を急かすようにして外に出た私は、明るさに目を細めながら聞いた。
こに来るまでの電車で経験した逆ナン未遂事件を思うと、また電車に乗って帰れとは言いづらい。
「本当にもう帰るのか?」
「だって先輩体調悪そうですし、一刻も早く女がいない空間行った方がいいと思います。……あ、タクシーの運転手さん女の人だったらどうしよう」
「おい。さっきは一瞬心拍数が異常に高くなっただけで、別に体調不良ではない。俺はまだ帰らないからな」
先輩は腕を組んで断言する。
変な意地張る子どもみたいだな。
「……じゃあ、暑いですしあそこのアイスクリーム屋さんでも行きます?」
「アイスか、いいな」
「食べたら帰ってくださいね」
「……仕方がないな。そうするよ」
綺麗なお顔がかなり不本意な表情を浮かべている。だけどアイスを食べたい気持ちには抗えない様子。大変素直な人だ。