女嫌いなはずの御曹司が、庶民の私を離しそうにない。
そして、買ってきた抹茶アイスを一口食べた瞬間には、そのお顔はやっぱり子どもみたいにぱっと明るく輝いた。
「美味いなこれ」
「暑い日にはやっぱりアイスですね」
「ああ。それにしても、ここまで美味しいアイスはなかなかないぞ」
「何言ってるんですか。先輩は普段もっと良いもの食べてるでしょ?」
普段私が買うことはないような高級アイスを毎晩のように食べてそう。うらやましいなおい。
「……放課後に同年代の友人と買い食いなんて、フィクションの世界だと思ってた」
「何ですかそれ」
「ゲームセンターだけじゃなくて、こういうの自体初めてなんだよ。……こんなに楽しいものなんだな」
先輩はちょっと照れくさそうに言って、またゆっくりアイスを口に運ぶ。
食べ終わったら帰れって私が言ったから、少しでもこの時間を延ばすためにゆっくり食べてるのかも……なんて気がした。
だからなのか、口から自然とこんな言葉が出てくる。