女嫌いなはずの御曹司が、庶民の私を離しそうにない。
天才なのにたまに馬鹿っぽいよなこの人。
でも、そういうところが一緒にいて飽きない。
そういえば私、加賀見先輩と知り合ってから、学校に通うことをあまり苦痛に思わなくなった気がする。
思う存分自習できる場所を確保したこと、詩織ちゃんという友達ができたこと。
こういうことも学校が嫌じゃなくなった理由だけど、これだって加賀見先輩がいてくれたおかげで手に入れられたものだ。
……私、先輩に与えられまくってるな。
「先輩。アイスもう一個食べません? おごりますよ」
「川咲が俺に? 逆じゃないか? 普通こういうのは先輩から後輩に……」
「まあまあ。気持ちの問題なので受け取っておいてください」
私はにっと笑って、アイスのフレーバー一覧が載ったパンフレットをもう一度開いたのだった。