女嫌いなはずの御曹司が、庶民の私を離しそうにない。
間接キス未遂の怨み。
▽
*˸
゜
デジャヴ。これまでにどこかで経験したことがあるように感じること。既視感ともいう。
私はこの日、まさにそれを味わった。
「そういうわけで、あの先生の頭頂部は絶対にカツラだって確信したんだけど……」
「ふふ、本当に?」
隣のクラスとの合同授業が終わり、それぞれの教室へ帰る途中。
詩織ちゃんと楽しくおしゃべりしながら歩いていた私は、中庭の隅にある木の陰にそれを見つけた。
ぽつんと落ちている黒い靴。
だけどそれは一部に過ぎなくて、よく見るとそこからすーっと足が伸びているのが遠目にもわかる。
「うわっ」
「どうしたの瀬那ちゃん?」
「な、何でもない! ごめん詩織ちゃん、先行ってて!」
「……? うん、わかった」
「じゃあまた!」
それの存在が詩織ちゃんの目に入ってしまう前に、私はそう言ってひらひら手を振る。
その後ろ姿が小さくなるのをしっかり見届けてから、大きくため息をついた。
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デジャヴ。これまでにどこかで経験したことがあるように感じること。既視感ともいう。
私はこの日、まさにそれを味わった。
「そういうわけで、あの先生の頭頂部は絶対にカツラだって確信したんだけど……」
「ふふ、本当に?」
隣のクラスとの合同授業が終わり、それぞれの教室へ帰る途中。
詩織ちゃんと楽しくおしゃべりしながら歩いていた私は、中庭の隅にある木の陰にそれを見つけた。
ぽつんと落ちている黒い靴。
だけどそれは一部に過ぎなくて、よく見るとそこからすーっと足が伸びているのが遠目にもわかる。
「うわっ」
「どうしたの瀬那ちゃん?」
「な、何でもない! ごめん詩織ちゃん、先行ってて!」
「……? うん、わかった」
「じゃあまた!」
それの存在が詩織ちゃんの目に入ってしまう前に、私はそう言ってひらひら手を振る。
その後ろ姿が小さくなるのをしっかり見届けてから、大きくため息をついた。