女嫌いなはずの御曹司が、庶民の私を離しそうにない。
「川咲?」
「もう! 起き抜けに私の顔見たらすんごい悲鳴上げたっていう前科があるから気を使ってあげたんじゃないですか!」
恥ずかし……
私は顔を隠すのに使っていた教科書で、熱くなった顔をパタパタあおぐ。
「あのときはっ……! ちょっと驚いただけで!」
「ちょっとってレベルじゃなかったですよね!? 最初事情知らなかったから、顔見て悲鳴上げられたの結構なショックでしたよ!」
「ぐっ……というか川咲、頭良いのにたまにわけのわからないことをするな」
「えええ……先輩にだけは言われたくないんですけど……」
「どういう意味だ?」
「そのままの意味です」
私は今わけのわからないことをした自覚があるからいいんだ。
先輩は普段自分がズレたこと言ってる自覚なさそうだもん。絶対私の方がまともだ。
「で、今回は何があって倒れてたんですか? 知らない女子に後ろから突然抱きつかれでもしました?」