女嫌いなはずの御曹司が、庶民の私を離しそうにない。
今さら悲鳴を上げられることはなさそうなので、私はとりあえずその場に座って事情を聞いてみることにした。
「知らない女子にっ……? 恐ろしいことを想像させないでくれ。そんなことされたら人目のない場所へ避難するまでもなくその場で倒れる!」
あ、今回もやっぱり場所選んで倒れてたんだ。
それができるなら保健室まで頑張ればいいのに。
「保健室は遠いだろ……それにしょっちゅう保健室に出入りしているところをあまり人に見られてしまうのは……」
「え、今私の頭読みました?」
「保健室行ってから倒れりゃいいじゃん……とは天ヶ瀬に何回も言われてるからな……」
なるほど。思うことは一緒か天ヶ瀬先輩。
遠目に見たことがある程度で一切関わったことのない天ヶ瀬先輩のことを、私はすでに仲間認定している。
いつかご挨拶させてもらいたいものだ。
「……別に何てことはない。担任から、クラス委員の女子と手分けして書類を運ぶよう頼まれたんだが」