女嫌いなはずの御曹司が、庶民の私を離しそうにない。
「だけど、徐々に色々な人で慣らしていかないといけないのも事実だよな。どうにか方法を考えないければ……」
「そうですよ。女性恐怖症なんて早く克服して、私を解放してくださいね!」
胸のあたりのもやもやを誤魔化すように、私はわざとらしく肩をすくめた。
すると先輩はため息をついて項垂れる。
「本当に俺は川咲に迷惑をかけてばかりだな」
「え、いや、あの……今のは冗談ですから。ゆ、ゆっくり治していきましょう? 私ならちゃんと付き合いますよ。……ほら、水飲みますか?」
教科書と一緒に手に持っていた二本のペットボトルのうち一本を渡す。
最近は暑いからすぐに喉が渇く。そう思って二本まとめて買っておいたのだ。
「さっき自販機で買ったばっかなので未開封です」
「ああ、ありがとう……」
「あっ、待って。そっち一口飲んだ方だったかも」
「げほっ」
「あ、いや大丈夫。渡した方が新品で合ってました。……って、先輩顔真っ赤ですけど」
「誰のせいだ!」