女嫌いなはずの御曹司が、庶民の私を離しそうにない。
外見は童話の王子様みたいな雰囲気だけど、テンション高めだなこの人。
……あと、川咲“嬢”って何だろう。呼び方だいぶ気になるな。
「川咲嬢にはずっと会いたいって言ってたのに、加賀見のやつ全然会わせてくれなかったからさ」
「お前は川咲に何かしら悪影響を与えそうだから嫌だったんだよ」
加賀見先輩は、そんな天ヶ瀬先輩のことを本気で嫌そうに見ている。
ちょっと笑いそうになった。加賀見先輩、友達といるときはこういう力の抜けた表情するんだな。
「じゃあ今日はどうして会わせてくれる気になったんですか?」
「なってない。今日だって勝手に付いてきただけだからな」
加賀見先輩は天ヶ瀬先輩の肩をぐっと掴み、私から引きはがすようにしながら答える。
「川咲に用事があって来たんだ。まあ、こいつのことはいないものと思ってくれ」
「あ、はい」
「酷くない?」