女嫌いなはずの御曹司が、庶民の私を離しそうにない。






天ヶ瀬先輩の抗議の声は華麗に聞き流される。

私はクラスメイトたちの視界に入りにくい場所までさりげなく移動し、その用事とやらを聞くことにした。




「夏休みの後半、花火大会があるのを知っているか?」


「ああ、ありますね」




いきなり何の話だろうと思いつつ、心当たりがあるのでうなずいた。


ここの付近ではいくつか花火大会が開催されるけれど、先輩が言っているのはその中でも一番規模の大きなもののことだろう。

家族と一緒に行った年もあったけど、今年は小学生の弟が友達と行くのだと張り切っていたから、私はもう行かないつもりでいた。




「花火大会の日は毎年、うちのグループが経営するホテルのラウンジを貸し切って小規模なパーティーを開くのが我が家の恒例行事なんだが」


「何て??」




私は、当然のように続けられた説明に反射で聞き返した。

うちのグループが経営するホテル? ラウンジを貸し切り? 小規模なパーティーを開くのが恒例行事?


ずいぶんと情報多くないですか? ねえ。



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