女嫌いなはずの御曹司が、庶民の私を離しそうにない。
……だけどそれらの気になるワードにいちいち触れていたら話が進まなそうなので、鋼の精神力で口を閉ざす。
「家族でそれぞれ親しくしている友人を数名呼んで、軽食を食べながら花火を見る。堅苦しいものじゃない。天ヶ瀬も中等部の頃から毎年参加してくれているな」
「うん。あのホテル、周辺で一番高いから花火がすごくよく見えるんだよね」
「もし良かったら……今年は川咲も参加しないか?」
「え、私もですか!?」
目が回りそうなほどラグジュアリーなお誘いに思わず声が裏返る。
花火大会へのお誘い=会場に行って縁日を楽しむ
まさかその発想自体が庶民的だったとは。世界って広い。
「もちろん、嫌なら無理にとは言わないが……」
「嫌だなんてそんなはず……!」
セレブたちの日常を体験できる貴重な機会、逃す手はない。
……いや、そうじゃなくたって。
私は手を挙げ前のめりになる。
「絶対に行きます!」