女嫌いなはずの御曹司が、庶民の私を離しそうにない。





「誰もが振り返るほどの美人ってわけではないけど、そこそこモテるだろうねあの子は。お前は体質的にこれまで恋愛に縁が無かった分、勝手がわからないのかもしれないけど……ちょっと油断したら知らないうちに取られてるかもな」


「……」






そう指摘されて黙るしかなかった。


何となくわかる。

容姿というより、その佇まいや纏う雰囲気が不思議と印象に残る。そしてすました表情をくしゃりと崩して笑う瞬間を見ればもう目を離せなくなる。

それが川咲瀬那だ。


彼女の魅力に気付いている人間が俺だけなはずがない。




「真面目なのが加賀見の良いところだけど、この件に関しては真面目過ぎると後悔するかもね」




天ヶ瀬はその言葉の後に、ようやく表情を緩めた。


この友人は、本気で俺のことを心配してくれている。それがしっかりと伝わってきた。



こいつは普段から、女性恐怖症の俺を一切からかったりせず、いつも当たり前のようにサポートしてくれている。



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