離婚まで30日、冷徹御曹司は昂る愛を解き放つ
プロローグ
「え~うそ、なんで動かないの」
芦沢果菜は沈黙したまま、微動だにしなくなったお掃除ロボットを前に、困り顔で首を捻っていた。
「せっかく助けてあげたのに」
狭い場所はまりこんで困っていた様子だっただから、持ち上げて広い場所まで運んであげたというのに、それ以来、お掃除ロボットは一切の反応がなくなりスイッチを押しても起動する様子がなく、果菜は諦めたように息を吐いた。
「こういう時の対処法は……」
仕方なくといった様子でスマートフォンを取り出し画面を見つめる。しかし、求めている情報にはなかなか辿り着けず、果菜は眉を顰めた。
その時、果菜のいる部屋の扉が、何の前触れもなくがちゃりと開いた。
果菜はリビングの扉が開かれるまでその人物の帰宅に気付いていなかった。少し驚いた果菜の肩が揺れる。
「ただいま」
「あっおかえりなさい」
果菜は顔を上げて、すぐに扉の方を振り返った。
果菜と暮らす男性は一人しかいないので、顔を見なくても誰かはわかっていた。
見れば想定通り、ネクタイの緩めながら入ってきたのは、果菜の夫である芦沢遼だ。
遼はそのおそろしいほど整った顔に、若干の疲れを滲ませながら、リビングの中ほどにいる果菜の近くまで歩いてきてその顔を覗き込んだ。
「どうした?」
「なにが?」
何に対してどうしたと言われているのかよくわからなくて首を傾げた。
「何かまたトラブル起こしてるんだろ。そういう顔してる」
「トラブルってほどじゃないけど……」
なかなかに鋭い遼の指摘に、果菜は曖昧に答えながら足元で沈黙しているお掃除ロボットにちらりと視線を向けた。
果菜の目線を追いかけて、遼も同じように足元に目を向ける。
「またこれ? 動かなくなった?」
芦沢果菜は沈黙したまま、微動だにしなくなったお掃除ロボットを前に、困り顔で首を捻っていた。
「せっかく助けてあげたのに」
狭い場所はまりこんで困っていた様子だっただから、持ち上げて広い場所まで運んであげたというのに、それ以来、お掃除ロボットは一切の反応がなくなりスイッチを押しても起動する様子がなく、果菜は諦めたように息を吐いた。
「こういう時の対処法は……」
仕方なくといった様子でスマートフォンを取り出し画面を見つめる。しかし、求めている情報にはなかなか辿り着けず、果菜は眉を顰めた。
その時、果菜のいる部屋の扉が、何の前触れもなくがちゃりと開いた。
果菜はリビングの扉が開かれるまでその人物の帰宅に気付いていなかった。少し驚いた果菜の肩が揺れる。
「ただいま」
「あっおかえりなさい」
果菜は顔を上げて、すぐに扉の方を振り返った。
果菜と暮らす男性は一人しかいないので、顔を見なくても誰かはわかっていた。
見れば想定通り、ネクタイの緩めながら入ってきたのは、果菜の夫である芦沢遼だ。
遼はそのおそろしいほど整った顔に、若干の疲れを滲ませながら、リビングの中ほどにいる果菜の近くまで歩いてきてその顔を覗き込んだ。
「どうした?」
「なにが?」
何に対してどうしたと言われているのかよくわからなくて首を傾げた。
「何かまたトラブル起こしてるんだろ。そういう顔してる」
「トラブルってほどじゃないけど……」
なかなかに鋭い遼の指摘に、果菜は曖昧に答えながら足元で沈黙しているお掃除ロボットにちらりと視線を向けた。
果菜の目線を追いかけて、遼も同じように足元に目を向ける。
「またこれ? 動かなくなった?」
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