離婚まで30日、冷徹御曹司は昂る愛を解き放つ
思いもよらない提案
「……この方が先ほど言っていた今お付き合いしている人なの?」
「そう。夏原果菜さん。MIKASAで働いている。共同プロジェクトの件でMIKASAを訪れた際に際に出会った」
(……うそ。本当に言った……)
遼が果菜に『頼みごと』をしてから、ちょうど、十分後。
果菜は遼の隣で信じられない状況に慄きながら、遼の母親と相対していた。
かろうじて顔に貼り付けている笑みが、ひくひくと引き攣ってしまう。
遼の頼みごとーーそれは、なんと、自分の恋人のフリをしてほしいというものだった。
「あなた、自分のお見合いに、恋人を連れてきていたの?」
呆れたような母親の声に遼がうんざりしたようにため息をついた。
「俺は、今日見合いがあるなんて聞いていない。話したいことがあるからと言って俺を呼び出し、騙し討ちで見合いをさせたんだろ。彼女はたまたま近くにいて、俺が連絡したら、心配して来てくれただけだ」
言いながら遼は果菜の肩に手をまわして自分の方に引き寄せた。その行動に果菜は内心とても驚いたが、今この状況ではそれを表に出すことはできなくて、必死に笑みをキープする。
(ああもう、私まだ了承した訳じゃなかったのに、ここまできたら突っぱねるのなんてもう無理じゃない……!)
とんでもないことになってしまった果菜は恐れ慄いた。
果菜が遼にどういうことかと聞いたあと。
遼はいきなり、果菜が手に持っていたお見合い写真の束を掴んで自分の小脇に抱えると、もう片方の手で果菜の手を掴み、「歩きながら説明する」と言って、そのまま引っ張って歩き出した。
そうして、歩きながら本当に、自分の事情を語り出したのだ。
その内容はこうだった。
遼は現在三十三歳。三十歳を過ぎた頃から、両親から早く結婚をすることを期待され、日々結婚について急かされるようになった。
付き合っている女性がいないことを説明すると、干渉はさらにひどくなり、ついにはお見合いをセッティングされるようになった。
しかし遼は結婚についてまったく興味がなかった。役員となり幅広く事業を統括しなくては立場にいるため、仕事に専念したかったのだ。
彼にとって女性は煩わしい存在で、一人の女性を選べば当然、ある程度は時間を割かなくてはならなくなってしまう。そういうことを今はしたくなかった。
だから持ち込まれるお見合いも片っ端から断っていた。結婚は自分に余裕ができたらその時に考えようぐらいに思っていた。
しかし、その状況を両親は許さなかった。彼は一人息子で唯一の跡取りだ。何としてでも結婚して子を設けてくれなくては困る。
結婚願望がなさそうな息子に焦りを募らせいく両親。お見合いにうんざりした遼が応じなくなると、嘘をついて遼を呼び出し、騙し討ちでお見合いをさせるようになった。
そして今日も、遼はどこかの社長令嬢と強制的にお見合いをさせられた。
仕方なくその場で丁重に断り、お見合いはほどなく解散となったのだが、相手方が帰ったあと、遼の動向を監視するために別の部屋で待機していた母親が現れて、揉めた。
遼は勝手にお見合いをセッティングすることについて母親に苦言を呈し、母親はよく考えもせずにその場で断りを入れたことについて非難した。
そうして言い合いをしているうちに、あまりに結婚について煩く言われることに対して、ついに我慢の限界を迎えた遼は、つい、自分には今付き合っている女性がいると、嘘をついてしまった。
そして、その勢いのまま、近々紹介すると宣言してその場を去った。
そうして、レストランの個室から出て、これからどうしようかと考えながら廊下を歩いているところで向こうからきたのが、果菜だったという訳だった。
「そう。夏原果菜さん。MIKASAで働いている。共同プロジェクトの件でMIKASAを訪れた際に際に出会った」
(……うそ。本当に言った……)
遼が果菜に『頼みごと』をしてから、ちょうど、十分後。
果菜は遼の隣で信じられない状況に慄きながら、遼の母親と相対していた。
かろうじて顔に貼り付けている笑みが、ひくひくと引き攣ってしまう。
遼の頼みごとーーそれは、なんと、自分の恋人のフリをしてほしいというものだった。
「あなた、自分のお見合いに、恋人を連れてきていたの?」
呆れたような母親の声に遼がうんざりしたようにため息をついた。
「俺は、今日見合いがあるなんて聞いていない。話したいことがあるからと言って俺を呼び出し、騙し討ちで見合いをさせたんだろ。彼女はたまたま近くにいて、俺が連絡したら、心配して来てくれただけだ」
言いながら遼は果菜の肩に手をまわして自分の方に引き寄せた。その行動に果菜は内心とても驚いたが、今この状況ではそれを表に出すことはできなくて、必死に笑みをキープする。
(ああもう、私まだ了承した訳じゃなかったのに、ここまできたら突っぱねるのなんてもう無理じゃない……!)
とんでもないことになってしまった果菜は恐れ慄いた。
果菜が遼にどういうことかと聞いたあと。
遼はいきなり、果菜が手に持っていたお見合い写真の束を掴んで自分の小脇に抱えると、もう片方の手で果菜の手を掴み、「歩きながら説明する」と言って、そのまま引っ張って歩き出した。
そうして、歩きながら本当に、自分の事情を語り出したのだ。
その内容はこうだった。
遼は現在三十三歳。三十歳を過ぎた頃から、両親から早く結婚をすることを期待され、日々結婚について急かされるようになった。
付き合っている女性がいないことを説明すると、干渉はさらにひどくなり、ついにはお見合いをセッティングされるようになった。
しかし遼は結婚についてまったく興味がなかった。役員となり幅広く事業を統括しなくては立場にいるため、仕事に専念したかったのだ。
彼にとって女性は煩わしい存在で、一人の女性を選べば当然、ある程度は時間を割かなくてはならなくなってしまう。そういうことを今はしたくなかった。
だから持ち込まれるお見合いも片っ端から断っていた。結婚は自分に余裕ができたらその時に考えようぐらいに思っていた。
しかし、その状況を両親は許さなかった。彼は一人息子で唯一の跡取りだ。何としてでも結婚して子を設けてくれなくては困る。
結婚願望がなさそうな息子に焦りを募らせいく両親。お見合いにうんざりした遼が応じなくなると、嘘をついて遼を呼び出し、騙し討ちでお見合いをさせるようになった。
そして今日も、遼はどこかの社長令嬢と強制的にお見合いをさせられた。
仕方なくその場で丁重に断り、お見合いはほどなく解散となったのだが、相手方が帰ったあと、遼の動向を監視するために別の部屋で待機していた母親が現れて、揉めた。
遼は勝手にお見合いをセッティングすることについて母親に苦言を呈し、母親はよく考えもせずにその場で断りを入れたことについて非難した。
そうして言い合いをしているうちに、あまりに結婚について煩く言われることに対して、ついに我慢の限界を迎えた遼は、つい、自分には今付き合っている女性がいると、嘘をついてしまった。
そして、その勢いのまま、近々紹介すると宣言してその場を去った。
そうして、レストランの個室から出て、これからどうしようかと考えながら廊下を歩いているところで向こうからきたのが、果菜だったという訳だった。