離婚まで30日、冷徹御曹司は昂る愛を解き放つ
「俺が直せばいいだけだろ」
 
 ドクン、と果菜の鼓動が大きく脈打った。

――笑ってそんな風に言うなんてずるい。

 うっかりときめいてしまうではないか。自分たちは本当の夫婦ではないのに。
 果菜は思いがけず、少し赤くなってしまった顔を隠すように俯いた。

 本当はこんな反応を取ってはいけないのに。

 自分たちは契約結婚。お互いに、特別な感情は持つことは禁じたはずだった。

(……わかってるけど、仕方ないじゃん。私だってこんな気持ちになるなんて予想外だったんだから……!)

「着替えてくる」

 果菜の気持ちを知ってか知らずか、遼はそう言うと、労わるように果菜の頭をポンポンと軽く叩き、そのまま部屋を出て行った。

「……そういうのも、だめだって……」

 果菜は、自分の頭頂部に残る、遼の大きな掌の温かい感触の名残を確かめるようにそこに触れながら、ぼそりと呟いた。
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