規則正しい、三角関係!?〜交際禁止を守りたいから、2人とも邪魔しないで?〜

間章.はじめてのメッセージ



****


『真澄です。よろしくお願いします。』


んー、シンプルでええんやけど……。
返事困るよな、絶対。


帰宅した後、(真澄 純)
着替えもせんと自室に引きこもって、
スマホと対峙中。


連絡先は聞けた。
メモなんかせんくても、忘れるわけない。
この数字……誕生日かな。


今はそれよりも。
………何を送ればいいかがわからん。
あれ、もう1時間も経ってるやん。


『こんばんは。今日の夕飯は焼き魚です。栞さんは…』


いや、いきなり何の話やねん。
興味ないやろ、俺の晩飯。


『真澄です。本日購入した青汁ですが、スッキリとした後味で、豊富な食物繊維を感じることができ…』


いやいや。
これやとただの青汁オタクやん。
もっと困るやろ、返事。


『真澄です。今度の土曜日デートしてくれませんか?』

…そんなん送れるんやったら、こんな苦労はせん!


はぁ。
自分の不慣れさにため息が出る。
1人で漫才して、何やっとんねん俺は。


俺の底辺の戦闘力じゃ、ラチあかん。

……しゃーない。
イヤやけど。ほんまにイヤやけど。
あいつに聞くか。


困り果てた俺は、
関西におる、付き合いの長い友達へ連絡してみることにした。


あいつ、
アホやのに、やたら女子ウケええからな。
アホやのに。


『なあ。気になっとる人に、
最初に連絡するとき、なんて書いたらええの』


藁にもすがる思いや。
頼むから、めっちゃええ打開策もってきてくれ……!


祈るように送信すると、秒速で既読がつく。
それから1分も経たずして通知が……


『アホー!!!
そんなん悩まんとなぁ
黙って押し倒せばええんや!!!』


そんなんできるか!!!!!
アホはどっちやねん!!!!


……あーもー。
ぜんっぜん進まん。


藁にもすがれへんかった俺は、
ベッドに項垂れて、スマホを放り出した。


………送んの、諦めよかな。
どうせ俺のメッセージなんて、待ってないやろ……


ここ2日、
俺は慣れへんなりに、なかなか頑張ってると思う。
なにが正解かわからんから、加減わかってないけど。


一番頑張ったのは、
渡り廊下で声かけた時。


なけなしの勇気を振り絞ったおかげで、
声かけることには成功したけど、
その後ノープランすぎて……


言葉も出んし、ぐっだぐだやし、
思い返しても完全不審者やった俺に、
栞さんは笑ってくれた。


ほんで気づいたら放課後、
身体が勝手に美術室に向かってたな。


転入前の説明、何も聞いてなかったから、
交際禁止とかはじめて知ってびびったけど……。


禁止とか言われてもなあ。

栞さんの、芯のある大きい目に見られるだけで、
体温あがって沸騰しそうになるし。

花が咲いたようなあの笑顔が、
何度も脳内再生されてるし。


でも……
それを覆い隠すように、
俺を牽制する、幼馴染とかいう奴の憎たらしい顔も……。


……。


…………。


…………………いや、やっぱ送ろ。
ここで弱気になったら、負けな気ぃする。


交際がどうとか、そんなんの前に、
とりあえず仲良くならな、お話になりませんもん。


もうええわ。
こうなったら勢いや!
なんでもええから送ろ!!


『真澄です。見学の時、ありがとうございました。
ちなみに青汁はめっちゃマズかったです。』


送信。


………お、おくった。


すごい。おくれた。


すごいやん、俺……!!!


たったこれだけのことやけど、
俺にはでっかい一歩。


よし。あとは返事待つだけ……
……って。
これ、返ってこんかったら、かなりへこむな…。


『ピロン』


達成感や期待や不安がグルグルし始めた中、
スマホから通知音が鳴った。
反射的に手が伸びる。


『田中です。連絡ありがとう。
よろしくお願いします。やっぱり不味かったんだね、ごめんね。』


……返事もらえた。


へえ………そっか……
………こんな感じなんや。


今までメッセージの一つで、
一喜一憂してる友達の話聞いても、
なにが?って思ってたけど………。


……………めっちゃうれしいやん。


『ピロン』


喜びに浸ってる間に聞こえた、再びの通知音。


『ところで、忙しければ断ってもらって大丈夫なんだけど、土曜日ってあいてる?良かったら、ボウリング行かない?』


え。


え………?


……えぇーーー!?


思わぬ内容で、
理解するのに時間かかったけど……


こ、ここ、これって、これって……!!


「一緒にでかけましょう」いうお誘いってこと!?
しかも丁度、俺も言おうと思ってた土曜日!
今週土曜日は練習ないねんよな。

そんでボウリング!?
栞さんボウリングとかするんや???


いや、まって。そんなことより。


休日に……2人で……って
…ででででデートってこと?!


なんやこれ。心臓飛び跳ねる。
めっちゃドキドキする。


『絶対行きます。楽しみです!!!』
…と打ちかけてたときに聞こえた、追加のピロン音。


『私と、
私の友達と、流星と。
友達が、真澄くんに会いたがってて…
歓迎会ってことで、どうかな?』


……あ。そうっスよね。

突然2人で、ボウリングなわけないですよね。
お友達がね、会いたがってくれてるんスね。

………お友達がね。


『ありがとうございます。
土曜日、行けます。よろしくお願いします。』


感情のジェットコースターで普段の500倍疲れた俺は、
『過度な期待は禁物』という教訓を、心に刻みつけた。

< 20 / 87 >

この作品をシェア

pagetop