規則正しい、三角関係!?〜交際禁止を守りたいから、2人とも邪魔しないで?〜
「真澄くん!びっくりした、いないのかと思った」
「や…こんなん集中できんから、
なんとかしてもらお思って、顧問呼んできたんです」
あ、ほんとだ。
コワモテの体育教員の梅田先生が飛んで行き、
すごい勢いで列を解散させていく。
「従わないなら帰るように」との指示も聞こえてくる。
流石にそれは嫌なのか、
続々と、指定された離れのエリアへ移動を開始していく女の子たち。
あぁ…みんなすごく不満そうだ。
「……でも、なんでこんなことに…?」
「…いや、なんか俺……
南条祭のあと、女の人に囲まれてもて…
でも、こんなことになるとは……」
ああ。そう言えば。
後夜祭で、大きな真澄サークル出来てたもんな。
そこでファンが増えちゃったのか。
「………で?知らんかったなぁ。
斉藤もサッカーに興味あったなんて」
…あ。
久しぶりに見る、真澄くんの冷たい目。
「い、いや、真澄くん、
あの…流星とは家出る時に偶然会って……」
「や、もう帰るとこだし。ね、しーちゃん」
「え?ち、ちがう、そうじゃないでしょ」
「ほなお前だけ帰ったらええんちゃう?」
「あの…」
「は?ってか、そもそも何勝手に誘ってんの?」
「ちょっと…」
「勝手ってなんやねん。許可制ちゃうし」
「………」
「コソコソしてんの、まじでうぜぇ」
「せ、や、か、ら!お前にいう必要ないって言ってん……
「………んもーーーー!喧嘩しない!」
私は勢いよく、2人を引き剥がした。
「ほら!練習!!参加しなきゃでしょっ!」
そしてコート側へと、
真澄くんの背中を押していく。
…なんとか流星と距離を取らせることに成功中。
「ね、栞さん。…これ似合ってますか」
こちらの苦労なんてつゆ知らず、
真澄くんは、着ているユニフォームの襟元を軽くつまんでいる。
「え!?う、うん!似合ってる。かっこいーよ!」
真澄くんを押すことに必死で、
あまり気持ちのこもった返答ができない。
それまで軽快に進んでいた真澄くんの体が急に、
ズンと、重くなって進まなくなった。
「?どうしたの…
「……ですよ」
「えっ?」
「……栞さん。
ほんまに、俺、わかるんですよ。
こんなけの人がおっても。
もし仮に、こうやって会えてなかっても。
栞さんがおるってことだけは、絶対」
真澄くんの背中に触れている手のひらがあつい。
そう感じたのも束の間、彼がこっちへ振り返り、手が離れる。
……それでも、わずかに残る熱が消えない。
「他の誰かやなくて、
栞さんの応援だけが欲しいんです。
…やから、頑張れって言ってくれませんか」
…あぁ、まただ。
何度か見た、真剣な彼の表情。
私、この前から、ずっと感じてた。
なんか…
なんていうか……
この目をしている真澄くんの言葉は、怖い。
私の心の底に張ってる糸に触って、緩めてしまいそう。
………自分の中の何かが、負けそうになるんだ。
だめだよ、この先は。
入ってこないで。
「………が、頑張ってね。
ごめん。用事思い出しちゃったから、帰らなきゃ。
…それじゃ」
「えっ、栞さん!」
私を呼ぶ声を無視して、
その場から逃げてしまった。