お嬢さまですもの!
「それにしても……部長の九条先輩が出てきたときは心臓止まるかと思ったよね。昔を思い出してさあ」

「えっ!?」


 どきりとして、固まってしまうわたし。


「ほら、覚えてるでしょ? 昔、公園でドレス姿のお姉さんに、あたし泣かされたことあったじゃない? あのお姉さんのこと思い出したよ」

「ああ、あったね、そんなこと」


 わたしは動揺を隠してうなずいた。


「いや、あたしの黒歴史なんだけどさ。桜子をいじめたから当然の報いなんだけど……。あのときは、ホントごめん!」


 かのんは申し訳なさそうに眉を下げて、両手を合わせてきた。


「ううん、子どものころの話じゃん? 今のかのんは、やさしいから大好きだよ」


 にっこりして言うと、かのんはじゃれるように抱きついてきた。


「桜子~、あたしも大好きだよ~」


 そして、かのんはハッとしたように、わたしから体を離して言った。


「そういえば、あのお姉さんも九条先輩みたいに金髪で、青いドレス着てたよねえ。なんであんな格好で公園にいたんだろ? ……あっ、もしかして『お嬢さま部』の部員だったのかな?」

「えっ、『お嬢さま部』の……?」

「ああ、でも外国の人だったよね? じゃあ、ちがうかぁ」

「うん、ミレーヌって名前だったかな……」

「よく覚えてるね、桜子」


 かのんが目を丸くしたから、わたしはあわてて、
「名前だけは覚えてて……。でも、もう五年も前のことだしね」
 って、ごまかした。
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