お嬢さまですもの!
 それにしても。

 先輩たちが見ている前で、理央くんと手をつないじゃった。

 思い返して、頬がかーっと熱くなってくる。

 女の子の格好をした、かわいらしい理央くんのイメージそのままに、小さくて、やわらかい手だった。

 それでも空手家だけあって、ぎゅっと力強く握ってくれて……。

 その温もりが、今も手に残っている。

 ヤダ、わたしったら、なに考えてるんだろ。


「桜子~、ロールケーキあるわよ~」

「はーい」


 一階からお母さんに呼ばれて、わたしはハンカチをまた机の引き出しに仕舞った。


     * * *


 その日の夜、わたしはスマホのメッセージで、かのんに入部テストの結果報告を入れておいた。

 理央くんと揃って不合格になったことを簡単に伝える。

 しばらくして、返信がきた。


《それは残念ね。やっぱり厳しいのね》


 落胆したような顔文字が添えてある。

 さらに、続けてメッセージがきた。


《でも、ふたりが『お嬢さま部』の入部テスト受けたのはウケる》


 わたしはため息をつきつつ、返信を打ちこむ。


《かのん! なぐさめてるのか、おもしろがってるのか、どっちよ》


 怒りの顔文字つきだ。

 ピロリン♪ すぐに通知音が鳴った。


《ごめん! 許して!》


 泣いてる顔文字と、土下座の絵文字もたっぷりとつけてある。

 仕方ないなぁ。
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