お嬢さまですもの!
「でもよ、文句言いにくるなんて、意外と骨があるじゃん」


 にやりとしたかと思うと、雪平先輩は手を伸ばして、わたしの頭にぽんと乗せた。

 わわっ! こ、こ、これはどういう状況なの!?

 イケメンの雪平先輩の大きな手が、わたしの頭に!


「ほめてやるよ」


 ドキッ!

 重低音のイケボが降ってきて、心臓が跳ねる。

 ニッと、雪平先輩の口角(こうかく)が上がった。


「お前、見込みあるよ」


 言いながら、雪平先輩はわたしの髪をくしゃくしゃと、かきまわした。


「わわっ!」


 わたしはあわてて飛びのいて、頭をおさえた。


「もうっ! 何するんですかぁ」


 口をとがらせながら、髪を手ぐしで直すけれど。

 心臓の鼓動がうるさいくらいに鳴りひびいていて、雪平先輩に聞こえるんじゃないかと、内心、気が気じゃない。

 雪平先輩は愉快そうに目を細めると、
「俺から九条先輩に話つけてやろうか? 『加賀美と椿にセカンドチャンスあげてください』って……」

「ホントですか!?」

「ああ、気の強いやつは大歓迎だぜ。あれだけ言われて、怒らなきゃ嘘だもんな。椿のやつなんか、俺にガンつけやがったからな。度胸は認めてやる」


 ああ、そういえば、にらんでたなぁ。


「あはは。あれは、わたしを守ろうとしてくれてたし……。それに、わたしは怒ってるというか……ちょっと聞きたいことがあって……」


 べつに殴りこみに行こうとしたワケじゃないもんね。


「聞きたいこと……?」


 雪平先輩は、目をぱちくりさせた。
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